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2025.1.10
vol.5 制作におけるデザイン

蜂屋うちわ職店の基本的な方針として、デザインから制作まで全ての工程を一貫して行う、がある。
その中でもここ最近は実際の制作よりデザイン面に多くの時間を割いている。春以降は制作が多くなるため腰を据えてデザインに向き合いにくいというのが主な理由だ。
ちょっと前にコラムを始めたこの機会に、普段蜂屋が行っているデザインあれこれについて何週かに分けて書いてみたいと思う。

まず、うちわ制作におけるデザイン作業は大きく分けると2種類ある。
・うちわ面に施す柄(がら)や文様のデザイン
・うちわ自体の形と、それに合わせる柄(え/持ち手のこと)のデザイン
今回はひとつ目、うちわ面のデザインを考える場合について。基本的な流れを以下に挙げてみる。

1.デザインのテーマと使用するモチーフの選択
うちわ面に配置するテーマとモチーフの内容を決める。
 例) テーマ「冬」/ モチーフ「雪輪」「雪花」
テーマは特定の物事や季節の草花、その時の気分など多岐に渡る。余談だが今後はより攻めたテーマも手掛けたい。

2.モチーフについての調べ物
美術資料や文様集、先人の作品などからそのモチーフについての見識を深めたり、図案イメージを膨らませる。
そのモチーフが持つ意味合いや歴史的な成り立ち・民族学的な逸話など、この段階でより興味を引かれたり参考になる事柄は多い。
ここ最近はこの作業により資料用の書籍がものすごく増えている。いちど整理をせねば...

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3.デッサンやトレース、その後リタッチや配置
ここから実際にデザインを形にしていく作業となる。ドローイングやトレースで大まかな形を描いたあと、部分的なリタッチで細かい修正をして自分がイメージする形に近づけていく。
基本的にPCとタブレットを用いてデジタル上で作業を進めることが多いが、状況に応じてアナログでの作業も行う。
その後実際のうちわ面への配置やサイズを考え、実寸での出力と微調整を繰り返しデザイン案を確定させる。
PCの画面上と紙に印刷したものではサイズ感や線幅などにギャップが生まれる場合もあるため、紙への出力をベースに調整を行う。

4.シルクスクリーン製版
うちわに使う和紙に顔料を乗せる方法はプリンターでの印刷 / シルクスクリーン印刷のどちらかの場合が多いが、シルクスクリーンを用いる場合は確定したデザイン案での製版を行う。
当店ではこの作業も全て完結できるため頻繁に製版を行っており、「美術/芸術」をテーマにした今年はさらにその機会も増えそうな気がする。
製版が可能なことで制作のスピード感や表現の幅の広がりなど、クリエイションに対して果たす側面は大きいと感じている。

5.和紙への印刷、現物の制作へ
ここから実際のうちわ制作工程へ移行する。

普段行っているデザイン制作についてのおよその流れはこのようなところだろうか。
続く